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「音譜に恋して」シーン26

広島ブログ

初めての方はシーン1からどうぞ。

「音譜に恋して」シーン1

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2012年8月26日
忌々しい顔つきで、その建物を見上げていた。

鳥取市にある梨花ホール。

吹奏楽コンクール・中国大会の会場である。

複雑な鉄骨で組み上げられたロビーの外壁は、全面ガラス張りとなっていた。

8月の終わりに近づいても一向に勢いが衰えない太陽の光は、ガラスを通して室内へと入り込み、さながら温室のようであった。

産まれて初めて、ハウスで育つトマトの気持ちが分かった。

何故このような建物を設計したのかと憤慨していたが、冬になればこのような建物は憩いの場となること間違いあるまい。

冬の寒さが厳しい地方ならではの知恵といえるのか。

冨山県で行われた高校総合文化祭も無事に終わり、帰広してからも連日のホール練習を重ねて迎えた本番の日。

ここで終わるか、それとも名古屋行きの切符を手にするか。運命の時間が迫っていた。

大会までのホール練習を何度か見学しているうち、希望的観測でも何でもなく「全国へ行けるのではないか・・・」と思い始めていた。

指導に来てくれていた先生の指示を受けて、一つ一つの音が出来上がっていく。

ピッコロ担当の銀子は、出番が少ないために他のパートの楽譜まで耳コピで丸暗記したと言っていた。

その様子を見て聴いているうちに、全国の舞台は夢物語ではない!と思えるようになっていた。

事実、5年前には念願の全国大会進出を果たしている。

このメンバーで出来ないはずがない、と思っていた。

本番当日、HKGは午前遅くなっての出番。

汗だくになりながらようやく席を確保する。

前の学校が演奏を終えると、いつものように銀子が出てきて舞台のセッティング。

全員が座ったところで、銀子再び2階席に設けられた審査員席を睨みつける。

練習していた時の演奏が出来れば道は開けるはず。

胸の前で手を組んで、その時を待っていた。

「希望の空」の最初の音が出た瞬間に、希望は消え去った。

練習で聴いていた演奏とは随分と違う。

それは先生にも部員にも伝わったらしい。

崩れてしまいそうになるのを何とか持ちなおして課題曲が終わる。

次は自由曲「アパラチアの春」

課題曲を聴いて、全国への道が無くなったのは覚悟したが、アパラチアの春を聴きながら涙が止まらなかった。

未だかつて、これだけ感動する音楽を耳にしたことがあるだろうか。

上手い下手ではなく、魂の琴線に触れる演奏を聴いて唇が震えた。

もう十分。

これ以上何を望むのか?

与えられた環境と、与えられた時間で、懸命に駆け抜けた結果のこと。

金でも銀でもどうでもよかった。

結果は銀賞となり、銀子の3年間は物語の幕を降ろした。

自由曲「アパラチアの春」がこのメンバー最後の合奏となった。

この学校で、この先生が居て、このメンバーが居てくれてこそ走り続けてこれた。



1か月以上に渡ってお届けした「音恋」シリーズ。

次回が最終回

「いいね!」もヨロシク~☆

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冬の寒さ

島根や鳥取の冬の寒さは半端じゃありません。
分かる気がします。

もみじ日記さんへ

そうなんですよ!
夏はたまりませんが、寒くなるとオアシスのようになりそうな建物でした。

生活の知恵でしょうね!

ええ~~

もう最終回なの?
ずっと読んでいたいよ~~

上杉薬局さんへ

そう言って貰えると嬉しいですね~♪

腹八分目辺りが潮時のような気がしますよ。
上杉さんもお嬢ちゃんの音恋シリーズ書いてくださいよ♪♪

はじめまして

昨夜、シーン1から一気に読んでしまいました(^_^)
私も中学時代は吹奏楽部でコルネットを吹いてたので
つい引き込まれてしまって。
思わず涙がこぼれる場面もありました(//∇//)

銀子ちゃん、木管も金管もいきなり音を出せたなんて
スゴイですね!!
次回が最終回とのことですが、機会を改めて続いていくのかなぁ・・・
なんて、勝手に期待したりしています♪

マスカットさんへ

初めましてですね!
どうもコメントをありがとうございます!!

薪ストーブさんのお友達ですよね?

どうぞヨロシクお願い致します。

マスカットさんも吹奏楽経験者でしたか!古い記事まで読んで頂いて嬉しいですよ~

木管で音が出たのはフルートだけですが、オレみたいに楽器経験がない人間はどう違うのかさっぱり分かりません・・(・.・;)

また続くがどうか今のところ未定ですが、続いて欲しいと願ってます。

またお気軽にコメントをくださいね♪

鳥取までようこそ。
追っかけするお父様がいらっしゃると娘ちゃんもがんばれましたね。
がんばったことは、ずうっと心に残っていますネ(^^)

ペアさんへ

お久しぶりですね~!

鳥取といえばすぐにペアさんを思い出しましたよ☆

生憎と倉吉方面を通らなかったので寄れずに残念でした。。

いつまで追っかけが出来るのか分かりませんが、追っかけ人生を堪能させてもらいましたよ~!!

子供が頑張る姿は親も励みになりますね!

連載お疲れ様でした。
ノンフィクションの傑作ですね。
我が子と同級生とあって、その思いのほとんどに共感しながら読んでいました。
連載が終わってしまったのは寂しいですけど、また違う形での音楽ネタが続いていくのを楽しみにしています!

チェリーさんへ

そうそう!!
多少の人物や背景を入れ替えたらチェリーさんところとそんなに違わんもんねぇ~!

同じ年代で良きライバルにも恵まれたのがまた良かったですね!

こうやって吹奏楽の話しを出来るブロガーさんとも知り合えたし!!

どんな形で「音恋」が続くのか分かりませんが、お互い子供が音楽してくれて良かったですよね~♪

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